第1章:初めて性のことを学ぶ人が知っておきたい、性教育の基本

性について、学校で少しだけ習ったことはあっても、「それって本当に必要なこと全部なの?」と感じたことはありませんか?

この章では、性教育の本当の意味や、日本ではどう教えられているのか、そしてどうして今“自分で性を学ぶ”ことが大切なのかを、やさしく解説していきます。

もし「性の話ってちょっと苦手かも」「自分にはまだ関係ないかな」と感じていたとしても、大丈夫です。
これは“誰もがいつか直面すること”に備えるための、知って損はない知識です。

少しでも気になったら、まずは最初のセクションから読んでみてください。

なぜ性教育は「今」必要なのか?

性についての情報は、ネットやSNS、動画、友達との会話など、いろいろなところから簡単に手に入る時代になりました。でも、その中には間違っている情報や、誰かの偏った意見が混ざっていることも少なくありません。

「よくわからないけど、なんとなく知ってる気がする」。
そんな状態のまま、なんとなく性行為に向き合ってしまうと、自分や相手を傷つけてしまうこともあります。

だからこそ、今、「正しい性の知識」を自分で持っておくことが、とても大切です。
性教育は、いやらしいものでも、恥ずかしいものでもありません。
自分のことを大切にするための、大事な“生活の知識”なんです。

間違った情報が「当たり前」になっていく怖さ

ネットで見かけた情報や、友達から聞いた話が、まるで“常識”のように広がってしまうことがあります。
たとえば「避妊は○○すれば大丈夫」「初体験は早い方がいい」といった噂が、根拠もなく信じられていることも。

こうした誤解は、知らず知らずのうちにあなた自身の選択肢を狭めたり、大切な人を傷つけたりする原因にもなりかねません。
だからこそ、「自分の頭で判断するための知識」として、性教育が今必要とされているのです。

性教育ってそもそもなに?

「性教育」と聞くと、避妊の方法や病気の予防の話を思い浮かべる人が多いかもしれません。
でも本来の性教育は、もっと広くて深い内容を含んでいます。
体のことだけではなく、人間関係、心のつながり、自分の意思を伝える力、他人を尊重する気持ちなど、私たちが安心して生きていくために必要な知識や考え方がつまっているのです。

たとえば「相手に嫌われたくないから断れない」と感じるのも、「性」についての知識や対話力が足りていないことが関係している場合があります。
性教育は、自分の気持ちを正直に見つめて、無理をしない選択ができるようになるための“心のスキル”でもあるのです。

世界ではもっと広い「性の学び」が当たり前

たとえばユネスコ(国際連合教育科学文化機関)では、性教育を「人間関係、感情、性と生殖に関する知識や価値観を学び、責任ある行動ができるようにする教育」と定義しています。
これは「性=いやらしいもの」ではなく、「性=人間の大切な一部」として、あたりまえに学んでいいものだという考え方です。

スウェーデンやオランダなどの国では、小学生のうちから性について自然に学ぶ環境があります。
日本ではまだ、“恥ずかしい話”というイメージが根強いかもしれませんが、本当はもっとオープンに話していいし、学んでいいテーマなのです。

性教育ってどこまで教えてくれるの?

「性教育は学校で習ったし、だいたいわかってる」と思う人もいるかもしれません。
たしかに日本の学校では、保健体育の授業などで体のしくみや妊娠・出産については触れられます。

でも実際には、性行為のリアルな場面や、避妊、性感染症、同意の取り方、心の準備といった実生活で必要になる知識までは、あまり教えられていないのが現状です。
その背景には、「性について詳しく教えると逆に興味を持たせてしまうのでは」というような、根強い誤解もあるようです。

「習ったはずなのに、よくわかっていない」現実

多くの人が、「授業で習ったことは覚えているけど、それが実際どう役立つのかはわからない」と感じています。
たとえば避妊の名前は知っていても、使い方やタイミングまでは知らなかったり、「同意って、言葉にしないといけないの?」といった疑問が残っているケースも。

つまり、学校で学べることには限りがあります。
だからこそ、自分から必要な知識を取りにいくことが、安心できる選択につながるのです。

家やネットで学ぶ性の知識は、どこまで信頼できる?

学校で教えてもらえないことを補うために、家族やインターネットを頼る人も多いと思います。
でも、家庭では「性の話はしづらい」「話題に出しにくい」と感じている人が少なくありません。

一方で、ネットやSNS、動画サイトなどはすぐに情報が手に入る反面、正しいとは限らない情報や、刺激を強調した内容も多く含まれています。
検索すれば何でも出てくる時代だからこそ、“正しく知る”という意識が必要です。

誰のための情報か?を見極める視点を持とう

情報が信頼できるかどうかを判断するとき、「誰が発信しているか」「どんな目的で作られているか」を考えてみましょう。
たとえば広告収益が目的の動画や、匿名のSNS投稿は、再生回数やバズることを優先して作られている場合も多いです。

性に関する情報はとても繊細で、個人差も大きいため、他人の体験談や主張をそのまま自分に当てはめてしまうのは危険です。
医療・教育関係の専門家が書いた記事や、公的機関の資料など、信頼できる情報源を意識して選ぶようにしましょう。

性行為の前に本当に知っておくべきこと

性行為は、恋愛関係の中で自然に起きるものかもしれませんが、「なんとなくの流れ」で経験してしまうと、後から後悔したり、不安やトラブルの原因になることもあります。

大切なのは、自分の気持ちをちゃんと理解し、無理のないタイミングと状況で行うこと。
「もう少し待ちたいな」「今はしたくないな」と思うなら、それをはっきり伝える勇気を持っていいのです。

また、避妊や性感染症のことをちゃんと知っておくことも、自分と相手を守る大事な準備のひとつです。
性行為は体だけでなく、心にも影響を与える行為だからこそ、情報と心の準備が必要なんです。

同意って、「うなずくこと」だけじゃない

「相手が嫌がってないからOK」「断らなかったからYES」——そう思ってしまう人もいるかもしれませんが、それは危険な勘違いです。

本当の同意とは、相手の気持ちを尊重し、はっきりと「したい」「いいよ」と伝え合えている状態。
たとえ恋人同士でも、気分じゃないときに無理をする必要はありませんし、「NO」を言っても嫌われることはありません。

お互いの気持ちを大切にできることこそが、性行為の前提条件です。
気持ちよさや快感よりも、まずは「心の安全」と「尊重」が大切だということを、しっかり覚えておきましょう。

「性=いやらしい」はもう古い?性に対する価値観の変化

「性の話は恥ずかしいもの」「そんなことを考えるのはまだ早い」——そう思ってしまうのは、きっと誰にでもあることです。

でも、今の時代、性について話すことは、恥ずかしいことでも、不謹慎なことでもありません。
むしろ、性に向き合うことは「自分自身の体や心を大切にするために必要な行動」として、少しずつ当たり前のことになってきています。

恥ずかしさ=悪ではない。でも、知ることはもっと大事

性にまつわることを「ちょっと恥ずかしいな」と思う気持ちは、決して悪いことではありません。
でもその感情だけでシャットアウトしてしまうと、大事な知識を得るチャンスを逃してしまうかもしれません。

自分の体、心、関係性を大切にするためにも、性について知ること、話すことを、少しずつ“普通のこと”にしていけたらいいですね。

性別・ジェンダー・恋愛感情についても学ぼう

性について考えるとき、「男か女か」「好きになる相手は異性か同性か」だけが全てではありません。
人の感じ方、性のあり方には、たくさんのグラデーションがあります。

たとえば「自分の体は女性だけど、心は男性に近い気がする」とか、「誰かに恋をする感覚がわからない」など、それぞれの違いはどれも“普通”で、“おかしくない”ことです。

性の多様性って? 知っておきたいいくつかの言葉

「LGBTQ+」という言葉を聞いたことがある人もいるかもしれません。これは、
レズビアン(女性同性愛者)
ゲイ(男性同性愛者)
バイセクシュアル(両性愛者)
トランスジェンダー(身体の性と心の性が一致しない人)
クエスチョニング(まだ自分の性を決めていない人)など、
性の多様性をあらわす言葉の頭文字をとった表現です。

これらはラベルや枠ではなく、「いろんな人がいていい」という考え方を広げるための言葉です。
誰かの性のあり方を否定せず、自分自身の感覚や立場にも安心できるようにするためのヒントになります。

恋愛感情と性的関心は別のもの

「誰かを好きになる気持ち」と、「性行為をしたいという気持ち」は、必ずしもセットではありません。
誰かに恋をしても、性行為はしたくないと感じる人もいれば、その逆もあります。

こうした違いも、それぞれの“自分らしさ”です。
他人と比べる必要はありませんし、無理に自分を当てはめようとしなくても大丈夫。

性のことを学ぶとき、自分の気持ちや違和感に正直になることも、とても大切な一歩です。

正しい知識が、あなたの選択を守る

性に関する情報や考え方は、人によって違うものです。
だからこそ、自分にとって何が正しいか、何が心地いいかを考えるには、“正しい知識”が必要になります。

なんとなく流されて決めたこと、周りに合わせただけの行動は、あとから後悔につながることもあります。
でも、自分の気持ちや相手との関係、体のことをちゃんと理解したうえでの選択なら、その行動に責任を持つことができます。

「知らなかった」ではすまされないこともある

避妊や性感染症、同意の大切さについて、「知らなかった」「誰も教えてくれなかった」と後で気づくこともあります。
でも、もしそれが自分や相手を傷つける結果になったとしたら、知らなかったでは済まされないこともあるかもしれません。

だからこそ、知っておくこと、学ぼうとすること自体が、あなた自身を守る行動なんです。
知識は、“ちゃんと向き合う力”になります。

おわりに:これからの性と向き合うために

ここまで読んでくれて、ありがとうございます。
「性について学ぶ」と聞くと、最初は身構えたり、恥ずかしく感じることもあるかもしれません。

でも、性の知識は“生きるための知識”です。
体のこと、自分の気持ち、大切な人との関係、どれもあなたの人生にとって大事な要素です。

わからないことがあっても大丈夫。
少しずつ知っていくことで、自分を守る力が育ちます。

この先も、迷ったり、不安になったときは、正しい情報に触れること、信頼できる人に話すことを思い出してください。
そして、あなた自身の気持ちを大切にして、自分のペースで向き合っていけたら、それがいちばん素敵なことだと思います。

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